☆ Data

登山日 : 平成21年8月6日~8日
山 名 : 白馬岳/白馬鑓ヶ岳
読 み : しろうまだけ/はくばやりがたけ
標 高 : 2,932.2m/2,909.1m
地形図 : 白馬岳、白馬町

☆ Accses (豊科ICから)

1.長野自動車道・豊科ICを下りたら、西進し、千国(ちくに)街道(国道147・148号線)を北上し白馬方面に。
2.「白馬」の道路標識に従い右左折する所が数ヶ所ある。。
3.道の駅「白馬」を過ぎ、飯森の信号の次の信号を右折。すぐ、広い道に出るので左折。
  (この信号を通り過ぎてしまったら、JR白馬駅前の信号を左折。右手ローソンの信号を右折する)
4.あとは真っ直ぐ。右手の大日向(おびなた)の湯を過ぎると山道(舗装はしてある)に入るので、対向車に注意。
  道がいいのでスピードが出る。
5.手書きの「大雪渓方面」の表示はあるが、「猿倉」の標識はひとつもない。
6.大駐車場手前を左折すれば猿倉荘に着く。

☆ Course Time

8/6 自宅---猿倉荘(前泊)

8/7 猿倉荘---(55)---白馬尻山荘---(25)---大雪渓・アイゼン装着---(75)---アイゼン取り外し---(80)---お花畑---(30)---村営小屋---(20)---白馬山荘(小屋泊)

8/8 白馬山荘---(55)---杓子岳分岐---(70)---白馬鑓ケ岳頂上---(20)---縦走路分岐---(105)---白馬鑓温泉小屋---(55)---杓子沢雪渓(温泉小屋から3つ目の雪渓)---(70)---小日向のコル---(115)---林道---(30)---猿倉荘

5分単位で切り上げ表示。休憩時間は含まない。

☆ Report

週間天気予報で、8月5日までは雨マークだったが、6~8日は曇り時々晴れを信じて、大雪渓から白馬三山を目指すことにした。しかし、天気予報には見事に裏切られた。

8/6
猿倉荘に前泊。猿倉荘は、里に近いのに風呂がない。外観、内装、出される食事内容や宿泊料金は山小屋並み。白馬村のペンション泊も考えたが、翌日の朝が早いのと駐車場の満杯も考え、猿倉荘に泊まることにした。宿泊者が少なく、2名で1室だったのは有難かったが、部屋は壁と畳の間に穴が開いており、いろんな虫が入ってくる。曇り時々晴れだった翌日の天気予報は、午前中は曇りで昼から雨と変わっていた。

8/7
予報に反して朝から雨、このぐらいの雨なら・・とゴアの上だけ着ていく。猿倉荘の前は、バスやタクシーが到着し、大勢の登山客でごった返している。山小屋に向かって左奥の道から出発。10分ほどで大駐車場からの林道と合流すると行列になった。ツアー客が道一杯に広がっているので前に進めない。右手の川は、水量が豊かで音を立てて流れ下っている。車止めの所からは、木道に変わる。「ようこそ大雪渓へ」の岩が見えたら白馬尻山荘。猿倉からちょうど1時間。

白馬尻山荘に到着 大雪渓のスタート地点

  大雪渓は雨の中を行く

山荘から15分ほど歩くと大雪渓が見えてくるが、上の方はガスで見えない。この頃には、あんなに大勢いた登山客がバラけてきていた。アイゼンを装着する場所は足場の悪いところで苦労する。雪渓はスコップですくった後のような不規則な形が続き、茶色というか紫色っぽい、人の踏んだ跡を一列になって辿ってゆく。前方で男性が転倒した。映画を見ているような見事な尻もちだった。アイゼンを履いていないのかと思ったが、近づいて見ると装着していた。

私は、大雪渓ではヘルメットを着用すると思い込んでいたので、かぶっていったが、メット姿は私一人だった。きっと、目立っていただろう。雪渓には、大小無数の岩が点在している。これらの岩は、すべて落ちてきたものだと、あちこちに表示があったが、岩の大きさを見るとヘルメットなど、気休めにしかならないと思った。

降り続く雨の中、雪渓を進むと左手の杓子岳方面の崖から石なだれの音が続けて4~5回聞こえた。幸い人のいないところを落ちていった。先行していた同行者の話では、もうすぐ雪渓が終わろうとする場所に差し掛かったとき、人のいる10メートルほどの所を、石が立て回転で落ちて行ったそうだ。

1時間15分の雪渓歩きも最後は、右手に大きくカーブしてアイゼンを取り外す。アイゼンを着けることは『装着』というが、反対に外すことは、何と言うのだろう?『脱着』は着けたり、外したりすることなので、装着の反対語ではない。結局、『取り外す』しかないか。

大雪渓が終わると落石の危険箇所に取り付く。この頃には、上から下りてくる人もいる。狭い登山道なので、行き違いが大変だ。葱平(ねぶかっぴら)に差し掛かる手前の九十九折れの登りで、私のすぐ目の前を20センチくらいの石が落ちていった。上からスミマセンの声が掛かったが、幸い下の方でも当たった人はいなかった。岩場を登るときも、岩礫の下を雨水が流れており、慎重に登ってゆく。建設中の避難小屋までは気が抜けない場所が多い。

  山荘到着後は暴風雨に

雨が強くなり、スラックスに雨が流れるようになり、冷たさも感じてきたので、遅ればせながら下ゴアを着用。こんなに雨が続くなら、始めから上下とも着ておけばよかった。登山道の両側がお花畑になったが、ゆっくり鑑賞する余裕もなく足早に立ち去る。赤いウエアのグリーンパトロールのお二人も、こんな天気では花の話もできないと、早々に引き上げられた。余談だが、私がヘルメット姿だったので、山岳パトロールと勘違いされたようで敬礼されてしまった。

風除けの岩洞で大休止の後、延々と続く急な登りに取り付く。すると正面に村営小屋が現れる。右折してロープで仕切られた間を登る。左右はお花畑のようだが、ガスで何も見えない。ずぶぬれ状態で、白馬山荘に到着。今回は2畳の個室を8,900円でルームチャージしていたので、1号館が割り当てられた。

早速、濡れた衣類を乾燥室に持ち込んだが干す場所がないほど。無理に端っこに押し込んだが、服同士がくっつきあっているので、翌朝までに乾くか心配。昼に到着した私でも、こんな状況だから、これから到着する人は干す場所もなく気の毒だ。衣類からのしずくで床が濡れているので、履き替えたばかりの靴下も濡れて気持ちが悪い。すぐ干したいが、こんな所に干したら行方不明になりそうなので部屋に持ち帰った。

展望レストランで食事をしていたら、突然、風雨が激しくなってきた。横殴りの雨が窓ガラスを激しくたたいている。私も到着が30分遅れていたら、もっと悲惨な目にあっていただろう。食事を終え帰ろうとしたが、台風並みの暴風雨となり、レストランと1号館の間には屋根があるが壁がないので、ほんの数メートルが歩けないほどだった。止むを得ず、再びレストランのテーブルに戻った。こんな中でも続々と登山客が到着していた。

  つかの晴れ間に白馬山頂が見えた

部屋で昼寝をしていると館内放送があった。内容は、乾燥室が混んでいるので、乾燥済みの衣類は持ち帰ってほしい、行方不明になっている衣類があるので確認し、違っていたら乾燥室に返して欲しいというものだった。放送は何度もあったので、その度に起こされた。食事の前に衣類を見に行ったが、全く乾燥していなかった。人が頻繁に出入りしており、乾く暇はないようだ。

夕食は5時、5時40分、6時20分の3交替制。場所は3号館、私の部屋からは一番遠いところにある。それに建物が繋がっていないので一旦、外に出て雨に濡れなければならない。私は5時の食事だったが、終わって外に出ると、いつの間にか雨が止んでおり、雲はあるものの白馬岳の頂上から杓子、鑓、釼、立山、そして富山県の平野までが見渡せる。あわてて部屋にカメラを取りに帰ったが、杓子、鑓はもう見えなかった。撮影を終え部屋に帰ると再び雨音が聞こえる。ほんのつかの間の雨間(あまあい)だった。

つかの間に見えた白馬岳 中央右が釼岳、その左が立山

8/8
翌日の朝食は5時から先着順ということだったので、放送がある前から並んだ。食後に乾燥室に衣類を取りに行ったが、ゴアの上下だけは辛うじて乾いているものの靴は濡れたままだった。残念ながら今日も雨。予報は、一日中、雨で所により霧だった。身支度をして6時には山小屋を出たが白馬岳は見えない。これでは山頂に行っても意味がないと白馬鑓方面に向かった。なお、山荘から頂上までは登り15分、下り10分程度。

  二日目も雨 がけ下で雷鳥発見!


ガスで視界が利かない中、縦走を始める。丸山の小ピークを越え、登ったり下ったりをくり返し、山荘から1時間、杓子の山頂への分岐らしきところに出たが、山頂へは行かず巻き道を行く。このあたりの道は歩きやすい。道の左右は高山植物が咲き、晴れていれば素晴らしい楽天地だろうと思う。杓子岳周辺にはコマクサが見られるとガイドブックにはあったが、残念ながら見つけられなかった。杓子岳と白馬鑓の鞍部付近の崖下で、雷鳥発見。前を歩いていた単独行の男性が見つけた。この男性とは、この後、鑓温泉まで一緒だった。早速、カメラに収めたが、ガスの中なので鮮明には撮れなかった。

わかりにくてスミマセン 鑓頂上、ガスと風雨で景色が見えないのが残念


傾斜が急になったので、白馬鑓の登りに入ったのだろうと推測。狭くてキレ落ちた岩場を抜けると小ピークがあった。雷鳥を見つけた単独行の男性に「ここが白馬鑓の頂上ですか?」と尋ねられたが、「標識がないので、違うでしょう」と答えた。

更に進むと道標があり、鑓の頂上は左に少し登ったところにあった。先ほどの小ピークは小鑓(こやり)というのだと、休憩していた単独行の女性が教えてくれた。この女性は健脚で、温泉小屋への途中では追い越したが、温泉小屋から猿倉に行く途中で追い越された。頂上の視界は10メートル程度。今回の山行きでは、初めての頂上である。頂上を後に再び縦走路に戻り、南進すると道標があった。真っ直ぐの道は天狗平に行く。

左に折れて九十九折れの斜面をどんどん下りる。大出原(おいでっぱら)の標識付近は一面のお花畑。この頃には風も止み、小雨になったが、相変わらず山は見えない。平らな石の上に腰を降ろし、単独行の男性としばらく会話をする。話題は「雨で残念。天気予報を見てきたのに・・・」から始まる。誰も思うことは一緒だ。

潅木帯に入ると急斜面が現れる。「岩場なのでストックをたため」という表示があったので、私はストックをザックに収納した。岩場、鎖場、梯子が続く。濡れているので滑りやすい。ストックを支えに一枚岩を下りようとした男性は、ストックがすべり転倒し、岩を滑り落ちた。声をかけたが「大丈夫です」の返事があり、すぐ立ち上がった。

なお、この場所について、「山渓」の平成23年4月号「山の論点・常駐隊が見た山の遭難」の記事に「ここでは転落事故が毎年発生している。鎖に頼らず通過しようとしてスリップし転落死するケースがある。北ア関係者は、事故の多い岩場の筆頭に挙げている」とある。ご注意を!

温泉小屋の水源ホースが見えてきたので、小屋が近いのを知る。小屋が見えてからも鎖場がある。小屋のHPに「鎖場がこわいと言いますが、本当にこわいのは小屋が見えてから、よそ見をして歩く事です」とあったので、よそ見をしないで慎重に渡った。

縦走路の道標 鑓温泉小屋、下の石垣が露天風呂


  白馬鑓温泉小屋での宿泊を変更し下山する

温泉小屋は、昼前なので空いている。温泉に浸かった。温泉では裸でいたところに下からカメラを向けられたので、あわてて風呂に戻った。当初の予定では、ここで1泊する予定だったが、翌日の天気予報も雨と霧だったので、泊まっても意味がないと今日中に猿倉に戻ることにした。雨と汗まみれの服を着替え、昼食を摂って出発。

狭いテン場の前を通り、1つ目の雪渓を横断する。登ってきたご夫婦が「途中、崖崩れしてますので、気をつけて」と教えてくれた。がけ崩れ箇所は、3つ目の雪渓を横断する手前の杓子沢で、瓦礫の山を乗り越えた。下りたところで若い男女4人と会話を交わしたが、猿倉から、ここまで5時間半も掛かったという。まだまだ、先が長いことを知る。

この後も、登ったり下ったりのくり返し、また、小さな沢を何度も渡ったり、沢の中を歩いたりしながら鑓温泉から2時間ちょうどで、小日向(こひなた)のコルに到着した。このあたりには、ニッコウキスゲがまだ咲いていた。近くで見ると、黄橙色がより鮮やかだ。

一つ目の雪渓、色の変わった所を歩く 8月上旬だが、ナナカマドの紅葉は早い


小日向のコルからは、ほとんど下りの連続となった。風雨も止み、汗が止まらないので、沢の水でタオルを冷やし、バンダナ代わりの鉢巻にした。それまでは、ガイドブックのコース時分より早いか、同じくらいで歩いてきたが、ここからは大きくペースダウンとなった。

掘割状の道を延々と下り、白馬岳登山道との合流点を目指すが、なかなか到達しない。すでに猿倉に到着していた同行者からは「あと、どのくらいだ」と電話が掛かった。遅れはじめたのは分かっていたので、遅れを取り戻そうと1時間ほど休憩なしで、水も飲まずに歩いてきたので、すぐには声が出ない。水音が大きくなり林道に出た。この林道は、猿倉の大駐車場に通じているはずなのだが、途中で通行止めとなっていた。猿倉→の標識に従い、右下の樹林帯を下りると5分ほどで猿倉荘に到着した。タクシーが数台いるだけで、前日の早朝の喧騒が嘘みたいに静かだった。

《余談ですが…》 白馬岳の歌といえば、まず思い浮かべるのが米山正夫さん作詞作曲の「山小屋の灯」だろう。穏やかな歌詞と優してく覚えやすいメディーで、昔から人気がある。カラオケにあるかどうかは知らないが、学校の音楽の教科書にも出てきたり、遠足の歌集には必ず入っていたので、私は今でも歌詞を見なくても三番まで歌える。その歌の二番の歌詞は、「暮れ行くは白馬か 穂高は茜よ…」で始まる。 決してケチをつけるわけでも何でもないが、同じ北アルプスの山とはいえ、白馬と穂高が両方見える山小屋はない。米山さんの創造と思われる。

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◎お願い
この日記は、登った日、当時の個人的な記録です。ヤマケイのガイドブックのように、必要な情報を網羅してはおりません。